アイドルとnice

 このところ、とある芸能人の病気公表がニュースやワイドショーで取り上げられている。娘とワイドショーを見たときに、女子大生の娘が「この人、何の人?」と聞くので、「元アイドルだよ」と答えたところ、「なんていうグループだったの?」と返してくる。「いやいや、グループじゃなくて、ソロね」と答えると、衝撃の発言:「え?アイドルって、グループの人しか言わないでしょう?」

 なんという予想外の発言。いや、若者に人気の人がアイドルっていうんだよと言えば、アイドルとはグループに属している人にしか使わないとの返事。まさにジェネレーションギャップというか、コミュニケーションブレークダウンを過程で味わうとは思わなかったのだが、言語学的には、意味の世代変化なので、不思議なことでも何でもない。

 この1時間後、娘がアイドルをwikipediaで調べたところ、2000年くらいからはアイドルはほとんどがグループであるらしい。嵐やモー娘。を考えてみれば宜なるかな。1997年生まれの娘の年代としては物心ついた時のアイドルは例外なくグループだったので、「アイドル」という語の意味に「グループ」という属性が内包されている。だが、1960年代生まれの私には、むしろ単独のアイドルの方がデフォルトなので、このような意味の齟齬が生じるのだ。

 言葉の意味は変わる。誰もが知る英語のniceという語の意味は16世紀では、「愚かな」というネガティブなものだった。それが意味の変化から逆にポジティブなものに変容している。かつては数百年かかったものが、ネット速度の現代だと数十年でその現象が見られるのかもしれない。いずれにしろ、なかなか面白い発見であった。