生きると命

 アメリカではBlack lives matterの運動が激化しているというニュースを目にするようになった。日本のメディアでも取り上げられるのだが、英語の教員としてどうしても気になるのは、このスローガンを日本のメディががどう発音しているかだ。要は、リブズなのかライブズなのかである。liveを動詞として考えるとリブズになるだろう。三人称現在単数でsがついたと考えればリブズだが、liveを動詞として考えると普通は自動詞だから、その後のmatterがつながらなくなる。そうなると、これはlifeという名詞の複数形のlivesでライブズという発音が正しくなる。Black livesで黒人の命という名詞となり、そうすればmatterが動詞として認識できて、黒人の命は重要だという意味になる。

 残念ながら、メディアによってはこれをリブズと発音するところがいくつかあった。きっと今はそういうことはないのだろうが、しっかりとした文構造を認識しないとこういうことになるという例になるだろう。

 アメリカもそうだが、世界の各地で人種や民族に対する差別的な行動が激化しているように思う。人はどうしても自分よりも弱い対象を見つけて、いじめることで鬱憤を晴らすのかもしれない。今のような経済格差の増長、新型コロナウィルスによる不安、雇用に対する不安、そういった中では余計に差別的な気持ちが助長されるだろうし、また今の抗議運動もそう言った不安への抗議でもあるのかもしれない。平常時には見えないものも、平常時だからこそ浮き彫りにされる。人間の理想と現実を見せつけられる時、はて、自分はどうなのかとあらためて、問われているんじゃないだろうか。