巨星、落つ

 日本の言語学において、機能的な研究を本格的に広げた先駆者は色々と挙げられるだろうが、そのうちの1人に間違いなくあげられるのは私の恩師であるF.C. Peng先生であろう。Peng先生は社会言語学、幼児言語学、神経言語学、と研究会を立ち上げ、セミナーも開催して、世界各地から一流の学者を招聘しては、日本に機能的な言語研究の種を撒いて下さった。私も弟子の1人として、言語研究にいかに取り組むべきか、学者というのはいかにあるべきかを身近で教えていただいた。

 特にM.A.K.ハリデー教授を日本に招聘し、1週間のセミナーを開催して、現在の選択体系機能言語学のきっかけづくりをしてくださったことは特筆に値するだろう。あのとき、スタッフの1人として資料のコピーをしながら、色々と私自身も学ぶことができた。

 強烈な個性ゆえ、様々な軋轢もあり、弟子として巻き込まれることもあったけれど、世界学会に行き、Peng教授のもとで勉強していると言えば、どんな学者にも通じたときには、恩師の活躍ぶりにあらためて驚嘆したものだった。

 そんなPeng先生が先週の水曜日に逝去された。お嬢さんからのご連絡を先ほど受けた。年賀状だけのやりとりだったけれど、数年前、学会の特別講師として招聘したときには、面前で私も研究発表をした。そのあとで「佐々木くんね、よく出来てたよ」とお褒めの言葉をいただいたときには、ようやくPeng先生の元から卒業できたような実感があった。

 

 Peng先生、先生の口癖の「よろしいですか?」は今や自分の口癖になっています。先生からご教示いただいた言語への取り組み方、学者としての生き方、貫けるように頑張ります。

どうか、安らかに。

 

Requiescat In Pace

 

 

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