喚起される昔の心

 子供の頃からプラモデルを作るのが大好きだった。物心ついた時から作っていて、幼稚園前にはすでに作っていた記憶がある。おそらく4、5才の時には作っていた。当時は50円のサンダーバードのものをよく作っていた記憶がある。小学生にもなると、クリスマス、正月、誕生日、全てプラモデルをねだったし、親が起きる前に朝早く目覚めては、プラモデルを作る子供だった。

 大人になってもプラモデル作りはやめず、特にF1は夢中で作り、今でも研究室には作品を飾っている。だが、大人になると、今度はディティールや仕上げが気になり、カーボンは全てデカール張りで再現したり、仕上げも何層も下塗りから、仕上げ、さらにはデカールを貼ってからクリアーを吹いて研ぎ出しなど、だんだん負担を感じるようになって遠ざかる。その代わりに手軽で、尚且つ作る楽しみが満喫できるペーパーモデルへと移行した。

 ところが、最近、またプラモデルが気になるのである。きっかけは最近目にした近所の模型屋だ。いつもはシャッターが閉じているのに、午後になると空く。何年も前から気になっていたのだが、昨日、所用のついでに初めて寄ってみた。店の看板もない、少し店頭に模型が飾ってあるだけの小さな店。テレビや映画に出てきそうな古びた雰囲気さえある。その店の扉を開けた瞬間、その空気は自分を50年くらい前に引き戻す気がした。模型の匂い、どことなく暗くカビ臭ささえ思わせるような匂い。天井まで積み重ねられたプラモデルの箱。懐かしいレベルの模型がある。最近は電気量販店でプラモデルを扱っているが、主流はガンダムもの。私の少し下の世代が夢中になったものだが、私の世代はプラモデルといえばスケールモデル。そこには惹かれない。昨日立ち寄った店の店主は私より少し上くらい。ちょっと昔のプラモデルの話をして盛り上がってしまった。かなり昔のキットまで揃っていて、マニアックな品ぞろい。ネットでは遠方からの客もいるらしいが、きっと大半は我々のような高年らしい。

 昨日はもう一見模型屋に行ってみた。出金途中に偶然見つけた店で、気になっていたのだ。入ってみると店の半分はガンダムもの。今の主流かと、店主を見ると、ガンダムものを作成していた。ここは自分のくるところではないのかなともう少し奥を見てみると、スケールモデルがある。レーシングカーはなかなか揃っているし、サードバーティー製のデカールも扱っている。侮れない存在だ。ここも先の店と同じで、個人経営。こういうところは購入して応援したくなる。

 昨日は買いたい気持ちをグッと抑えて、まずは下見とした。さて、次にこれらの店に行く時には、子供の時と同じように現金を握りしめて、心を躍らせて買うのは間違いなさそうだ。