また一つ巨星が落ちた。尊敬する東海林さだお先生が逝去された。東海林先生は私には人生の師である。ショージ君シリーズを読む中で、どれほど勇気づけられたことだろう。特に「ショージ君の青春記」は東海林先生が高校から大学入学、大学での自堕落な日々、そして漫画家を目指してなんとかもがく姿が描かれている。これを初めて読んだ時は、私も大学院生で将来への不安を抱えて、自分の人生はどうなるのだろうかと思案に暮れる日々だった。そんな私に「とにかくできることを少しづつ」と教えてくれたのがこの本だった。この本が学生にも推薦しているし、自分の子供にも読むように勧めた記憶がある。
ショージ君シリーズは旅行記もあり、食の批評もありで、多彩であった。確か週刊朝日に書いていたコラムをまとめてものだったと思う。東海林先生の「丸かじりシリーズ」も愛読書である。食べ物に対する深くて熱い愛情、そして鋭くも深淵に満ちた観察眼は唯一無二、東海林先生だけの世界観であった。この本を読むたびに、どれほど食欲が掻き立てられ、思わず読書後に、発作的に「ビールを飲まねばならぬ」と買い出しに走ったことであろう。東海林先生エッセイをきっかけに、椎名誠、開高健とエッセイを読みまくったけれど、東海林先生には敵わなかった。
東海林先生は西荻窪にスタジオを持っていた。私も4年間西荻窪に住んでいたので、エッセイの中に出てくる西友の話は親近感もあった。もしかしたら、どこかですれ違っていたこともあったのかもしれない。
東海林先生はアサッテくんなどの4コマ漫画で知られているが、私にはまさに文筆家としての存在感が大きい。活字であれだけ人間の感覚を喚起させることができる人は、もしかしたらもう出てこないのかもしれない。いくらAIが進んでも、あれほどA・I (愛)を込めて文章を書けることなどありはしないのだ。
東海林さだお先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます