温故知新

 この数日、風邪を引き、久しぶりに熱まで出してしまった。仕事関連でも周囲に迷惑をかけることとなり、反省している。このところの暑さと涼しさの繰り返しの中で体がとうとうついて行かなくなったようだ。思っているほど、体は若くないのだと痛感する。
 先日、授業でおすすめの映画はないかと聞かれて、最近はあまり見ないが、自分が若い頃は「卒業」を何度も見た話をして、そのストーリーについても話をした。若い頃に感じる漠然とした不安、何かにすがりたい気持ちは50年くらい経た今でも通じるものがあると思う。
 「卒業」はダスティン・ホフマン出世作であり、この作品では確かMrs. Robinsonを演じたアン・バンクロフトがアカデミー助演女優賞を受賞したと思う(後で調べたら、思い違いだった)。中学から高校にかけて、テレビやビデオ、その後はDVDも購入して、何度も見たのだが、原作はCharles WebbのThe Graduateで、この表題は正確には「卒業生」である。テーマは大学を優秀な成績で卒業したものの、将来の不安にさいなまれ年上女性にのめり込んだかと思えば、その娘と駆け落ちをする。その課程の中で生きることで大切なことは何か、自分とは何なのかを見つめて、本当の意味での「卒業」をして大人に脱皮する話だ。原作の英語はかなりわかりやすく、高校三年の時にペーパーバックで夢中で辞書を引きながら読んだ。For God's sakeという表現はこの本の中で覚えたし、bourbonの発音はこの映画で覚えた。
 学生に紹介したことから、ふと、kindle電子書籍で原作はないかと調べたら、1000円ちょっとで販売されている。早速購入して読み始めたら、すらすら辞書はいらずに読めていく。体調が悪くベッドの上でやることもなく、さすがに睡眠も飽きてしまった身にはちょうどいい読書になった。まだchapter1を読み始めたところだが、この年齢になると主人公のBenではなく、熟年のMrs. Robinsonの視点で読んでいることに気づく。高校生の頃の自分と今の熟年の自分、それぞれをオーバーラップさせながら、改めて読んでみると、新鮮な驚きを感じ得なかった。