しっぺ返し

 先日行われた大学共通テストでの不正が報道されている。どのようなハイテクを使ったのかわからないが、大切なことは試験で不正が行われたことだけではない。もっと本質的なことは試験で不正をしてでも合格してしまえば、あとは人生が薔薇色だという間違った考えがあることではないだろうか。不正をして、自分の力では入れない大学に合格したとして、その後、大学生活はどうなるかとは考えないのだろうか。日本の大学は入れば、あとは自動的に卒業できると思われているが、今の大学は出席は昔よりもはるかに厳格だし、授業以外の学習時間も確保するようなシラバス作成になっている。さらには主体的学びが少しづつ浸透し始めて、自分の基礎学力の上にさらに求められることが多い。

 たとえ大学に無理して入ったところで、その後の単位取得に次のハードルが待ち構える。大学の試験は知識の暗記ではなく、考えて論述させるものが多い。仮に知識を問う問題であっても、当該の講義を受けていなければわからないので、yahoo知恵袋に聞いたところで、解答は簡単には出てこない。必ず自分の力でなんとかしなければ打破できない状況になるはずだ。

 現役の大学教員として、「大学に入ってからが大変だよ」と改めて言いたいし、大学も半分を過ぎれば就職活動のハードルが待っている。「あなたは何ができるんですか。何をやってきたんですか。何をしたいんですか。」という就職活動で問われる質問の答えにどう対応するのだろうか。たとえネットの中の解答例を見ても、面接官やエントリーシートの人たちもそんな回答では実質的なカンニングと、取り合ってはくれないはずだ。

 不正には必ずしっぺ返しがあるし、不正で逃げても、必ず自分の正直な姿が問われる場面がくるのだと、大人は子供に伝えていく義務があるんじゃないだろうか。