夏休みの宿題1

 夏休みは感想文と自由研究、そして工作が宿題の定番だった(絵日記はこの際、無視)。今年の宿題の感想文から書くことにする。

 

読んだ本:『フィリピンパブ嬢の社会学』、『フィリピンパブ嬢の経済学』

著者:中島弘

出版社;新潮新書

 

 たまたまネットを見ていたら、タイトルが広告されたので、面白いタイトルだと思い、紹介を読んだのがきっかけだ。社会学を専攻する大学院生が、研究対象のフィリピンパブ嬢のフィールドワークで入ったフィリピンパブで、ミカという名前のホステスに恋してしまい、いわばミイラ取りがミイラになってしまったような実話だ。

 ただホステスに入れ込んでお金を使い果たしたとか、騙されたという話なら誰も見向きもしない。だが、これは本気になって好きになり、結婚までする話のノンフィクションだから引き込まれるのである。我々が兎角フィリピンパブホステスというと、搾取されているとか、危ない女だ、とかお金だけの繋がりだろうと、偏見で見てしまう。社会学的では、このようなネガティブなステレオタイプで規定されてしまう人たちも、ある種のマイノリティーである。ましてや、表向きは誰にでも優しいおもてなしと言いながら、裏ではとても閉鎖的な日本社会である。外国人就労者の彼女たちはとても厳しい環境下にある。そんな彼女たちを一人の人間として、飾らない言葉で描写する本書では著者のミカに対する愛が伝わってくるし、一人の人間としてのミカに読者も魅了されるはずだ。

 細かいストーリーは、本書を読んでいただければいいのだが、フィリピン人の家族に対する自己犠牲までも厭わない繋がりこそ、本書で学ぶべき点である。今の日本では親族関係が薄まり、とかく自分本位のことしか考えられないが、自分の経済的幸せよりも、貧困の家族への援助を優先するフィリピン文化というもののに敬意を払うと同時に、「そこまではできないな」と改めて思うところでもある。

 ちなみにこれは映画化が決まっていて、なんとロケが名古屋のお隣、春日井市だそうである。11月には公開となっていて、YouTubeでは予告映像も見ることができる。