「こんな夜更けにバナナかよ」を読んで

 kindle電子書籍で、「こんな夜更けにバナナかよ」を読んだ。きっかけは映画のPRだったのだが、その原作はどんなものだろうと、気軽に電子書籍をポチッとして、読み始めたのだが…

 その内容はちっとも気軽ではなかった。障害者とボランティアの感動の実話などと軽薄な言葉では語ってはいけない内容がそこにあった。これは主人公で筋ジストロフィー患者の鹿野氏とその介護をしたボランティアの人たちとの記録で、ライターが資料やインタビューを中心にまとめたものだ。

 内容の細かいことは敢えて書かないが、この本を読むと、「普通に生きる」とはどういうことか、という問いを自分自身に突きつけられる。助けるのは誰か、助けられるのは誰か、迷惑をかけて、助け合うのが人間だとわかっていても、人間関係の煩わしさが敢えてつきまとう。その煩わしさとどう向き合っていくのか。生を全うするとはどういうことなんだろうか、自分がその立場になったら、どうするだろうか。疑問や問いかけは果てしなく続く。いや、この本と向き合うと、その問いから逃げることが許されないんじゃないかと考えるのだ。

 映画はまだ見ていないが、この本を読んだ後だけに、むしろ見ないほうがいいかなと思う。最近の中で、久しぶりに心の真ん中が掴まれた本であった。